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若年層に強いドッグフードの話

〈〔八七年〕秋には財形法が改正され、損保の積立型商品が新たに財形の仲間入りを認められました。 これは、損保を軸とした金融サービスの拡大を目指す当社の基本戦略にとって大きな意義をもつものと評価することができます〉積立型保険は、結局のところ、公共性のある損害保険の名を使った、〈金融サービスの拡大を目指す〉ための戦略商品。

わずかの保険部分というエビを餌に、ケタちがいに大きなタイの積立部分を釣り上げ、国民大衆の資金をかき集めて、それを財テクやマネーゲームに投下するからである。 より巨額のマネーを集めて、本来の損保会社の本業ともかけはなれた、不動産投資やマネーゲームなどで運用し、そのことで、〈金融サービスの拡大を目指す〉というわけである。
その〈基本戦略〉こそ、ND2作戦の大本であるTOOS五カ年計画が打ち出したものだった。 保険審溌会はT海上の道を舗装したT社長の年頭挨拶で切り捨てられた部分の三つ目のポイントは、答申「新しい時代を迎えた損害保険事業のあり方」について語った、つぎの部分である。
この答申は、八七年五月一九日、大蔵大臣の諮問機関である保険審議会が大蔵大臣に提出した。 〈その〔答申の〕内容は、当社がTOOS計画で掲げている「総合安心サービス産業」の考え方と軌を一にするものであることは、すでにいろいろな機会に述べてきたとおりです〉T社長自身が保険審議会の委員であり、その答申がTOOS計画と〈軌を一にする〉というのも、無理からぬことかもしれない。
政府諮問機関である保険審議会などの各種の審議会は、財界、関係業界、大企業の代表とその代弁者である学者などが、大半の委員を占めている。 そして、実際上は、財界、関係業界、大企業の利益にそい、その意向をまとめて国の政策として答申していく機関になっている。
このことは、私もすでに〈いろいろな機会〉に述べ、『中曽根ファミリー」や『臨教審解体」(八六年、あけび書房刊)などで、その実態を追求してきた。 したがって、ここでは深入りしないが、ここで注目すべきは、T社長が答申の評価を〈いろいろな機会〉に述べてきたなかで、答申が提出される以前に、答申を先取りして自社の経営方針に生かしてきた発言である。
答申提出より一ヵ月余も前の八七年五月二○日、T海上は八七年度春季部店長(部長・支店長)会議を開いた。 T社長は、そこで、幹部社員たちに八七年度経営方針を報告した。
内容は、「TOKIOMONTHーY』も、抽象的に数行で伝えているだけだが、ある幹部社員が見せてくれた「T社長ご挨拶レジメ」には、はっきりと記されていた。 T海上の八七年度経営方針であるこのレジメによると、T社長は、〈五月に予定〉される〈保険審議会答申〉の内容について報告し、〈損保の中・長期的な展望を行なった答申〉であると評価。
その後、実際に答申されたのとそっくりの内容を、事前に幹部社員に伝えた。 T海上の八七年度経営方針そのものが、答申を先取りしたものである。

このレジメのなかで、T社長は、答申が〈積立型商品の位置づけの明確化〉をはかる点を第一にあげている。 そして、積立型商品の〈実績の評価〉では、〈保険会社の資産増大に寄与〉したといい、〈八七年度営業目標および営業方針〉では、積立型商品を〈積極的に販売するという基本方針に変更なし〉としている。
また、〈商品の多様化・改善により、高齢化社会、ライフサイクルに対応した商品開発〉が必要であると、国民の全生活と全生涯からマネーを釣り上げる〈今後の方向〉を示している。 さらに、〈資産運用体制の強化〉によって、釣り上げたタイに当たる積立部分の〈積立保険料の運用による利益の確保〉を強調。
結論として、答申がT海上のTOOS計画がうたう〈総合安心サービス産業と基本的に同じ方向〉であると述べている。 この部店長会議での「T社長ご挨拶レジメ」の内容は、T海上の各課や各支社の段階でも、課長・支社長会議などの〈いろいろな機会〉を通じて、社内に周知徹底されていた。
ND2作戦の横浜支店でも、実際に答申がまとまって大蔵大臣に提出された日より一四日も以前の、八七年四月一七日の全課長・支社長会議の冒頭で、このレジメにもとづいてS支店長が報告している。 このレジメに示された八七年度営業目標の〈必達〉を期した、横浜支店の下半期からの営業方針がND2作戦だった。
保険審議会答申は、T海上のTOOS計画と〈考え方と軌を一にするものである〉どころか、答申はTOOS計画を国の政策にするためのものといった方が、より正確かもしれない。 T海上の従業員教育用の「T海上ビデオニュース」のなかでは、下山博也取締役総合企画部長がつぎのように語っている。
「今回の答申で、T海上がすすめる『総合安心サービス産業』への道について、その方向に行政的基盤が確立された。 それは、T海上の前に行政が道路を舗装してくれたものと評価しています」保険審議会は、T海上がすすめるTOOS計画の舗装係といったことになる。
ND2作戦の背景を追跡してみると、以上のように損害保険の社会的役割を逸脱した、激烈なカネ集め戦争があり、T海上のTOOS計画があった。 また、政府の諮問機関である保険審議会すら、TOOS計画のための道を舗装する役目をつとめていた。
では、このTOOS計画がなにを狙ったものなのか、まTOOS計画は、八五年度からの五カ年計画となっている。 TOOSとは、T海上がめざす「総合安心サービス産業」なるものを意味する「トータル・プロテクション。

アンド・サービス」の頭文字などを組み合わせた造語。 「トップス」と呼ばせているが、なんでもトップでなければ気がすまないT海上のエリート意識や〈他社社員とはちがうのだ!〉という〈戦闘能力差〉をくすぐる。
広報部で「総合安心サービス産業とは具体的になにを意味しているのか」と聞くと、〈元気の元素〉は、T海上の「会社案内」とD出版「T海上の現状』(八七年刊)にあるその部分を示・した。 そこには、〈より多くのお客様に、より大きな安心と幅広いサービスをお届けする「総合安心サービス産業」への飛躍をめざしています〉などとあった。
〈お客様〉向けに極めて抽象的な美しい言葉が並べられている。 私たち社外の〈お客様〉には、なんのことかさっぱりわからない。
あまり明確に理解されない方が好都合なのかもしれない。 一般の〈お客様〉は見ることもできない、〈社外秘〉と表紙にある社内向けのリーフレット「TOOS五カ年計画」には、その狙いがある程度、具体的に記されている。
これには、TOOS計画が、〈金融業際戦争の進行〉に対応し、〈業界他社はもとより他業界との厳しい競争を勝ち抜いて〉いくためのものと明記している。 また、〈金融業際戦争〉に勝利するために、〈損害保険を基盤として、金融サービスの拡充、新保険分野への進出、損保の付加価値を高める各種サービスの開発などに取組〉んでいくという。
さきにみた、マル優廃止を〈販売チャンス〉として発売される最新の商品も、〈金融サービスの拡充〉の一つである。 リーフレットは、総合金融会社への飛躍をめざしたく基本一施策〉をあげている。

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